退職金の手取りはいくら?
退職所得控除と税金の計算
退職金は、給与やボーナスとは別の「退職所得」として、税金がかなり軽くなるように設計されています。 ポイントは2つ。勤続年数に応じた「退職所得控除」を差し引けることと、それでも残った分をさらに半分(1/2)にしてから課税することです。 この2段構えのおかげで、長く勤めた人ほど手取りは額面に近づきます。ここでは控除額の計算、勤続年数別の早見表、税金の計算例、確定申告が必要かの判断まで、概算で整理します(最新は国税庁での確認を前提とします)。
退職金の税金は「2段構え」で軽くなる
退職金にかかる税金は、次の流れで計算します。まず勤続年数に応じた退職所得控除を引き、残りを半分にしたものが、税率をかける対象(課税退職所得)になります。
課税される退職所得の計算
課税退職所得 =(退職金 − 退職所得控除額)× 1/2
この課税退職所得に、所得税(累進)と住民税(約10%)がかかります(他の所得と分けて計算する「分離課税」)。
退職金が退職所得控除額の範囲内に収まれば、課税される所得はゼロ=税金がかからず、額面がそのまま手取りになります。多くの人にとって退職所得控除はかなり大きいので、税負担は給与に比べて軽くなります。
退職所得控除額の計算(勤続年数で決まる)
退職所得控除額は、勤続年数によって次のように決まります。勤続年数の1年未満の端数は切り上げ(たとえば20年3か月は21年)です。
退職所得控除額
勤続20年以下:40万円 × 勤続年数(最低80万円)
勤続20年超:800万円 + 70万円 ×(勤続年数 − 20年)
勤続年数別の控除額の目安は次のとおりです。
| 勤続年数 | 退職所得控除額 |
|---|---|
| 10年 | 400万円 |
| 15年 | 600万円 |
| 20年 | 800万円 |
| 25年 | 1,150万円 |
| 30年 | 1,500万円 |
| 35年 | 1,850万円 |
| 38年 | 2,060万円 |
※ 20年を超えると1年あたりの控除が40万円→70万円に増えます。退職金がこの控除額以内なら、退職所得は0円で税金はかかりません。
手取りの計算例
例1:勤続30年・退職金2,000万円
| 項目 | 金額(概算) |
|---|---|
| 退職金 | 20,000,000円 |
| 退職所得控除(勤続30年) | − 15,000,000円 |
| 課税退職所得(差額 × 1/2) | 2,500,000円 |
| 所得税(+復興特別所得税) | 約 155,700円 |
| 住民税(10%) | 250,000円 |
| 税金の合計 | 約 405,700円 |
| 手取り(目安) | 約 19,594,000円 |
※ 所得税は速算表(課税所得250万円→税率10%・控除97,500円)+復興特別所得税2.1%で概算。2,000万円の退職金でも、税負担は約40万円・手取り率は約98%です。
例2:勤続10年・退職金500万円
| 項目 | 金額(概算) |
|---|---|
| 退職金 | 5,000,000円 |
| 退職所得控除(勤続10年) | − 4,000,000円 |
| 課税退職所得(差額 × 1/2) | 500,000円 |
| 所得税(+復興特別所得税) | 約 25,500円 |
| 住民税(10%) | 50,000円 |
| 税金の合計 | 約 75,500円 |
| 手取り(目安) | 約 4,924,500円 |
※ 課税退職所得50万円→所得税率5%で概算。控除内に多くが収まるため、税負担はごくわずかです。
確定申告は必要?「受給に関する申告書」がカギ
勤務先に「退職所得の受給に関する申告書」を提出していれば、退職所得控除を反映した適正な金額が源泉徴収され、原則として確定申告は不要です。多くの会社では退職時にこの書類を出すよう案内されます。
- 申告書を出した場合 … 控除を反映した税額で源泉徴収され、原則そのまま完了。
- 申告書を出さなかった場合 … 退職金に対して一律20.42%が源泉徴収されます。多く引かれていることが多く、確定申告で取り戻せることがあります。
- 確定申告した方が得なケース … その年の所得が少なく各種控除が余っている、医療費控除などがある場合は、申告で還付になることがあります(手取りの全体像もあわせて)。
注意点
- !勤続5年以下は優遇が制限される場合があります。役員等の短期退職手当等や、勤続5年以下の一定のケースでは「1/2課税」が適用されない部分があります。短期勤続の人は要確認です。
- !
- !住民税も分離課税でかかります。本記事は住民税10%で概算しています。退職金からは所得税と住民税の両方が源泉徴収されます。
- !本記事の金額は概算です。復興特別所得税や端数処理の関係で実額とは差が出ます。正確な金額は源泉徴収票・税務署でご確認ください。
根拠・出典
国税庁 タックスアンサー No.1420「退職金を受け取ったとき(退職所得)」/ No.2732「退職手当等に対する源泉徴収」/ No.2260「所得税の税率」(速算表)
※ 退職所得控除・1/2課税・短期退職手当等の取扱いは制度改正で変わることがあります。実際の税額・手続きは必ず国税庁および勤務先・税務署でご確認ください。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1420.htm